現在日本のビジネスは中小企業が約99%を占める。当然ながら存在する会社数と概ね比例し、経営者が存在する。
中小企業の定義は以下の通り。
である。本記事では中小企業にフォーカスする事とした。
私はコンサルティングファームに勤めていた時は大企業がクライアントである事が非常に多かったのだが経営コンサルタントとして独立してからは中小企業と関わる事が非常に多くなった。
様々な面で大企業と中小企業の違いに驚かされ、それは今なおしばしば起こる。
コンサルティングファーム出身や大企業出身のコンサルタントはやはり大企業との関わりが多く、それが故に中小企業への関わり方や提案が大企業のそれに近い場合が多い。
まずは中小企業と大企業の決定的な違いを知る事から始めなければやはり価値のあるコンサルティングに結びつかないのではないかと考える。
大企業と中小企業の違い
経営という視点では同じである。しかしながら規模の違いからくるギャップは存在する。
大企業におけるトップの仕事は『決断』である。細分化された業務において従業員の方々が練ったプランに対して『判断』し、『決断』する事こそがトップとしての大きな仕事だろう。
そして、『示す』事である。暫し例えられるが正に船頭である。方向と進むか止まるか。これらの指示を出し、実際に船を漕ぐのは従業員の方々であるケースがほとんどだろう。
加えて『責任』。トップとして決断して示した先に大きな損害があった場合は責任をとるのだ。この責任の取り方は様々だが。
纏めて船で例えると、船員(従業員)が地図や様々な過去の航海記録に基づき船長(社長)に今後の航路を提案する。船長はそれらを聞き、決断して方向を示す。結果として損害が発生した場合は責任を取り、次で巻き返せる是正策に走るか、船を降りるのである。
大企業の場合はここで船を降りても違う船が用意されている場合が多いのだが。
では中小企業の場合はどうだろう。大企業の船と比較して小さな船だ。船員も少ない。ただし小さく、船員も少ないことから全員にしっかりと指示が伝わる。そして小回りが効く。これが小さな船の強みだろう。
大きな船では情報が行き渡らず、なんとなく周りに合わせて船を漕ぐ場合が多い。そしてその情報がどこで止まっているかすらわからない。必要かどうかすら分からない化石のようなルールが蔓延る。
しかし少々の嵐では船はびくともしない。船長が変わろうがそれ程致命的なダメージはない場合が多い。
話を戻そう。
中小企業の船では、船長は船員の状況を見渡し理解し方向を考え、決断して示す。そして示した上で自らも一緒に漕ぐ。結果として大きな損害があった場合最悪船は沈む。当然船長に次の船はない。
自らも船を漕ぐ為、途中で進路を逸れていても気付かない。その代わり気付いた後の軌道修正も比較的容易である。
大きな船には船員が比較的容易に確保出来る。しかし小さな船は船員を確保する事自体が難題だ。
例えて記載したが大まかな違いはこのようなところだろう。では、これを整理した上で何が言いたいかに入ろう。
求められる事の違い
大きな船ではまず求められる事が細分化される。
- 方向を決める手伝いをしてもらいたい
- 効率的な船の漕ぎ方を教えてもらいたい
- もっと早く船を進めるためにはどうすればいいか
- 軌道修正する手伝いをしてもらいたい
このそれぞれ1つに対して求められ、理由と根拠を突き詰め数字で示す。『だからこうするべき』という『べき論』を提案し、実際に行動に移すかどうかは船長次第だ。軍師や航海士、現場のアドバイザーといった個々の特化したスキルが求められる。
では、小さい船ではどうか。はっきり言って『全部やってもらいたい』が正直なところだ。勿論『これをやってもらいたい』という必須事項は握るが船長からするとそれ以外にも様々な面においてサポートしてもらいたいのだ。そして提案する内容は理由と根拠は必要だがそれ以上に『本当に実行出来る落とし所はどこか』を見極め、提案する事が重要だ。
『べき論』だけ語ってもなんの役にも立たない。『べき論』を語った上で現時点ではこの施策が必須という所まで落とし込まなければ自己満足で終わる。
そして私は更にここから一緒に漕いでみる。方向を見ながら漕いで、もっとこうしようを提案する。苦楽を共にして仲間として一緒に進む事を心情としている。
さながら副船長。それが私が目指す中小企業の経営コンサルタントの姿なのだ。
船員と船長の意思疎通を明快にし、方向性を示して決断の背中を押す。決めた後は一緒に漕ぎながら荒波を乗り越える。その先にある目的地に辿り着いた時は一緒に笑う。そして出来る事なら『また次の目的地まで一緒に行こう』と言っていただく。
それが私の経営コンサルタントとしての考え方と自身の価値である。