企業がその価値を高める為に必ず取り組むべきなのが『改善』である。
現状維持は衰退と同じ。これはよく言われる言葉ではあるが的を得ている。何故なら多くの起業が改善に取り組み、一歩でも前に進む中で立ち止まっているだけでは置いていかれるばかりか刻々と変化する環境の変化についていけず方向転換もままならず、どちらに進めばいいかすら分からなくなってしまうからだ。
改善に取り組む事で得られる効果は何も数字的な面だけではない。
従業員満足度の向上やモチベーションアップ、従業員一人一人のレベルアップ。
そして職場環境の変化。
あらゆる面において、業務改善は遂行すべき必須事項であるにも関わらず、実態として積極的に推進している会社は少ない。
『やったのに成果がでない』という会社も少なくない。
どうせやるなら効果を出さなければならないし、そうでなければやる価値はない。その覚悟を以て取り組むべき全社的な試みなのだ。
業務改善、考え方はシンプル。
改善というと、トヨタ生産方式が真っ先に思い浮かぶ経営者の方も多いはずだ。知る事、学ぶ事で得られる事は沢山あるしそれは必ず役に立つ。
しかしながら、これから業務改善を始めるという企業がいきなりそんなレベルの話をする必要もない。
とかく難しく考えがちだが、もっとシンプルに考えよう。
どの家庭でも間違いなく日々小さな改善が実行されている。
例えばテレビのリモコン。どこに置くのが一番効率的か。探す必要がないか。
物がたくさんあるから整理しよう。まずはいらない物を捨てよう。
こんな事は誰しもが経験のある事だ。業務改善なんて基本的にはその延長線上だ。難しい事など何もない。誰でも出来る。
では何故うまく行かないのか。進まないのか。ここを考える事が重要だ。
家で出来るのに会社で出来ない理由は何か。それすらも実にシンプルな答えであるケースが多い。
- 家じゃないから(つまり個に直結しないから。またはしなくても困らないから)
- 自分の裁量で決められないから。(捨てていいか、整理していいか、片付けていいか。文句を言う人や禁止する人の存在も大きい)
- 効率を数字で~と言い出すと途端に難しくなるからめんどくさい。
- 忙しくてそんなことやってる場合じゃない
- 一人で出来る事じゃない
このような回答は多いように感じる。
では会社として業務改善を進めたい場合どうするか。
簡単だ。上記のような進まない理由をなくす環境整備をする事と推進する体制を整えてあげるだけ。そしてその進捗具合に興味を持って参画する事だけだ。
障害物走のイメージを持って
スタートラインに立ち、ゴールに向かって走る。その間にある様々な障害を取り除いたり避けたりしながらゴールにたどり着く。
どんな改善だろうとこの考え方は変わらない。障害物が大きく重い場合や、ゴールまでの距離が長い場合もあるだろう。しかし基本は同じ。
障害を取り除いたり、避けたりしながらゴールをするのだ。
では、障害物走を始める上で最初に決めるべきこと、準備は何か。
ここでいきなり障害物を取り除く道具について議論する人は少数派だろう。
単純に考えていただければいい。
まず決めるのはスタートとゴールだろう。
スタートとゴールを決める
スタートとゴールを決める。これがまず最初にするべき当たり前の行為だ。
到達したいゴール(理想や得たい効果)をまず明確にしよう。ここが曖昧だと途中で必ず走る方向を見失う。
明確且つ誰にとっても分かりやすいゴール。ここは数字の目標である事が望ましい。数字でなかったとしても解釈や見る人によって違うという事がない明らかなゴールでなければならない。
そしてスタートラインを見定める。
スタートラインは現状における自社の状況だ。行きたいゴールに対して現状一体どのような位置に自社がいるのかを冷静に見極める必要がある。
ここまで出来てようやく、どれくらいの距離を走る必要があるのかという全体像がおぼろげに見えてくるのだ。
経路は?どんな障害物がある?
スタートとゴールが決まればその間にある障害物や経路を考えていこう。
スタート時にゴールが見えているような距離ならばその間にある障害物や経路も大体は予測がつくだろう。
しかしながらゴールが遠い場合、どんな障害がありそうか経路はどのような道がいいかを事前に幾らか予測しておかなければならない。
自社の現状を見ていきながらどのような順序で進んでいく必要があり、どのような障害があるのか(問題点の抽出)とその取り除き方(解決策の立案)などを考えていくプロセスだ。
これらは現時点で考え得る限りで問題ない。
実際に走ってみると思ってもみなかった障害があったなんて事は当たり前にある。
見えない物に対して考え続けても分からない物は分からない。時間のムダだ。
ある程度の予測は必要だが、ここはノウハウ・経験が増せば増すほど精度が高くなる。
『こういった障害があった場合、こういうのも隠れている場合が多い。よってこの障害を取り除く為にはこういった手段が有効』
などというところにこそプロフェッショナルの力や社内で積み重ねた改善の経験とノウハウが役に立つ。
どれくらいの日程で走破するのか。その為のペース配分は
距離とその間にあるであろう障害物の予測、そしてそれらを排除する方法。経路。次にそのコースをどの程度の日程で走破しなければならないのかだ。
最初に『いつまでに』というのが決まっている場合も多いが、そうでない場合もよくある。
いつまでというのが決まっていない場合でも必ず『いつまでに』は設定しよう。
でなければ物凄い短い距離にも関わらず2年も3年もかかってしまう。
2年も3年も走っていて前に進まなければ途中で頓挫したり、違う障害物走にエントリーしていたりとゴールしないままにリタイアになってしまう。
だからこそ、必ず『いつまで』を設定する。そしてそれに基づいてペースを決めていく。これがスケジュール化だ。
いつまでに走破する為に、どのタイミングまでにどこまで進んでおかなければならなのか。どの障害物をいつまでに取り除いておかなければならないかなど。
それらを明確にしておく事が重要だ。
チームで走破する
会社での障害物走はチームで走破しなければならない。
冒頭で紹介したちょっとした家庭での改善は個人で完結するものが殆どだが、会社での障害物走は一人では走れない。
だからこそ進みにくいという事もある。
だからこそ、会社が『この障害物走はこのメンバーで走る』という人たちを決めてあげる必要があるのだ。
チームの在り方には様々な役割がある。
実際に走る人、そのサポートをする人。準備段階で尽力する人など。そういった役割を定めた上でのチーム設定をしなければ、どこかで立ち止まってしまう事になる。
ここは会社、経営者・マネージャーの力が必要となる。
こういった環境を整えてあげるのもチームの一員としての役割なのだ。
応援する、ゴール時に抱き合える
長い距離を走るのに応援が必要だ。周囲が関係ないという様子だと走る側もやる気が出ない。
くじけそうになる時も、下を向いてしまいそうなときも周りからの応援が前を向かせるものだ。
改善においても同じだ。やり始めたはいいが、管理職の人や経営者が興味はないといった様子ではモチベーションも上がらない。
時には進捗を聞き、その進み具合を褒めてあげたり、問題はあるかと問いかけてみたりという事が必要なのだ。
とかく進捗が遅いことに対して声を荒げるばかりの方もいるが、特に改善を始めたばかりの会社においては必ず褒める事をしてあげて欲しい。
そして、方向が間違っている場合はそれを正してあげて欲しい。
最初に決めた時にはこのコースで障害物はこのように排除して~と決めたが実際に走ってみると様子が違い、修正が必要になるという事も当然ある。
だからこそ、そういった時の方向修正や障害物排除の手段についての再検討など、あらゆる面でサポートをしてあげて欲しいのだ。
そうして、なんとかゴールにたどり着いた時には必ず『よくやった』とほめてあげて欲しい。
そうする事で次に走る際も頑張る事が出来るのだ。
まとめ
会社として本記事で言うところの障害物走を重ねていく事で、ノウハウや経験が積み重なる。
そうして更に難易度の高いコースも走れるようになる上に、過去の事例を基に障害物の速やかな排除方法を考える事が出来るようになる。
こういった業務改善のプロフェッショナルが『コンサルタント』である。
コンサルタントを雇うメリットとしては、
- スタート地点の正確な把握が可能
- ゴール設定の明示が可能
- 障害物について、その排除方法について、経路について、日程について速やかに且つ正確に計画が可能
ここまでは一般的なコンサルタントが行う業務だが、私も含め最近では一緒に最後まで走るコンサルも少なくない。
慣れない内は、もしくは経験のない規模の改善に関してはプロの手を借りる方が効率がいい。
社内のメンバーで改善したいと思っていても手探りでやるには時間がかかる。
それに要した時間分の費用もしくはその時間を使えば本来稼げていた金額と比較してほしい。
また、かかる費用にばかり焦点がいくがそれによって得られる効果が何年で回収できるのかという点においても見ておく必要がある。
詳細はこちらの記事をご参照頂きたいが、思っているほどコンサルタントというのは高額ではないのだ(勿論高額なコンサルタントも多くいらっしゃるが)
極めて客観的に比較して安価ならばコンサルでなくとも外部の人間を有効に使うというのは選択肢として十分に考えられるはずだ。
また、入り口として教育の一環を兼ね、コンサルタントや外部の方を上手く活用して社内の力を伸ばすというのも視野に入れたい。
そのやり方やノウハウを蓄積させ経験を積むことで会社としての地力は向上し、自らが改善を推進出来るようになる。
それが企業にとって最も重要な取り組みと一つである事は言うまでもない。
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